会社、またはSOHOといった小規模のビジネス事業所にビジネスフォンを導入しようとすると、電話交換機・PBXといった装置の設置や、配線を隠す二重床構造などの大がかりな手間が必要になります。2017年3月にオフィスを移転した際、固定電話をクラウド化したので、その内容をご紹介します。
ビジネスで固定電話を利用する際に必要な「電話交換機」や「PBX」
1人で運営しているビジネスや、あまり固定電話が必要でないビジネスにおいては、電話は携帯電話で済んでしまったり、そもそも1つの固定電話で間に合ってしまうこともあるかと思います。
しかし、座席のレイアウトの関係で、1つの電話を使いまわせない場合は、内線でやり取りする必要が出てきます。
ビジネスでの利用であれば、電話交換機・PBXといった、内線電話と外線電話同士を交換するための装置が必要です。
家庭用環境の電話と、ビジネス用途での電話は仕組みが違う
家庭用電話機であれば、保留→転送といった簡易的な取次で利用はできるものの、それ以上の高度な機能はあまり望めません。かかってきた電話をいったん保留にしておいて、任意の電話へ受け継がせるなどのこまかな動作は実現できないこともあります。家庭用電話機は、回線が1つの簡素な仕組みになります。
従来のビジネスユースの固定電話は、電話交換機・PBXが必要
ビジネスで使う場合、外線着信が1つだけとは限らず、同時にかかってくることも考えられます。1つの番号や回線が埋まっているときも、並列して着信を受けられるようにしておかなければいけません。
こういったやり取りを行うには、電話機単体の機能だけではまかないきれないため、主装置として電話交換機・PBXを設置するのです。
ビジネスフォンやPBXは決して安くはない
電話交換機やPBXは、新品・中古・性能などによりまちまちですが、それなりの費用がかかります。
- 電話機1台 30,000円〜100,000円程度
- 電話交換機・PBXで数万〜数十万以上
さらに、物理的にハードを持つことになるため、維持管理や故障に対してのコストも考慮しなければいけません。
IP-PBXという選択肢
IP-PBXは、LANのプロトコルであるIPに対するPBXです。LAN上で音声通話が実現し電話機以外のパソコンなどでもハードの機能を担うことができます。IP-PBXはハードウェアタイプとソフトウェアタイプの2つがあり、それぞれに特徴があります。
ハードウェアタイプのIP-PBX
* スイッチやルーター機能も付随
* セキュリティに配慮
* 稼働が安定
ソフトウェアタイプのIP-PBX
* サーバーにインストールして使用、物理的な装置がない
* メンテナンス性の向上
* すぐに構築可能
クラウド型PBXという選択
最近では、PBXをクラウドで利用するサービスも増えてきています。今回導入した内線クラウドもその1つです。こちらもメリットが多数あります。
メリット1. 初期投資と時間の削減
すでにあるサービスを契約しそれを利用する、という流れのため、PBXの購入費用がかかりません。これだけでも十万単位の費用を削減できます。さらに、設置やインストールなどの専門的な作業・システム構築が不要のため、契約後すぐに利用可能です。
メリット2. 運用コストの削減
ハードウェアを設置しないため、スペースが確保できます。電気代の節約にもなります。
メリット3. 企業規模の拡大に対応可能
クラウドサービスは、自分にあったプランや規模で契約をしますが、あとからサービス内容を拡充することが容易です。企業の規模の拡大・縮小にあわせて利用範囲を調整することが可能です。
メリット4. スマート端末との連携
既存のスマートフォンはもちろん、機種変更などで使用しなくなったスマートフォンやタブレット端末を、電話機として活用することが可能です。これらのスマート端末で内線化ができるようになるため、通信費用のコスト削減になります。
機器導入も最小限で済みます。
ナイセンクラウドとは
ナイセンクラウドとは、アイティオール株式会社が運営するクラウド電話サービスです。クラウド型PBXを採用しています。電話の着信イメージは、以下です。
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=v__BJlyymgY&w=560&h=315]
実際に申し込んで使っているのでその使用感や活用例などをご紹介します。
電話番号は050を採用
以前の電話は、仙台の市外局番である022からはじまる電話番号でした。コスト削減の意向が強い切替だったため、あえて旧来の番号は捨てて、あらたに050を取得しました。
050は、まだまだ一般には浸透しきっておらず、お伝えするとたまに「珍しいですね?」「本当ですか?」などと言われることも多々あります。022を使うと、NTTとの契約が必要でその部分のコストもかかってきます。
ちなみに、現在の運用状態では、NTTへの契約と支払いは一切ありません。ナイセンクラウドの利用料と、050番号の利用料・通話料がかかっています。
料金・機能比較表 | FUSION | KDDI | NTT |
---|---|---|---|
選択基準 | naisenとの相性が最も高い。柔軟な対応が可能。 | 分課金・秒課金で電話を多くかける場合にお得。 | 既存電話番号・地域電話番号に対応。 |
初期費用 | 500円~ | 1,100円~ | 20,000円~ |
月額費用 | 380円~ | 1,600円~ | 2,000円~ |
通話料金 | 3分8円~ | 3.3円/分 or 0.08円/秒~ | 3分8円~ |
利用できる電話番号 | 03/06/050/0120/0800 | 03/050/0120/0800 | 全国の電話番号 |
仙台←→埼玉の拠点間内線
会社の拠点は、仙台と埼玉の2拠点です。物理的に離れた拠点をまたいで内線をつなぐには、VPNだったり大がかりな機器導入だったりとコストもかかります。埼玉には電話1台あればよいので、規模を考えても、従来の方法で内線を繋ぐには少々オーバーな感じでした。
ナイセンクラウドを使うと、インターネット回線を介して内線通話を行うことができます。
例えば、仙台は200番台・埼玉は300番台を設定して、それぞれの電話機にさらに細かな内線番号を付与します。
内線番号 | 拠点 | 利用者 |
---|---|---|
200 | 仙台 | 全部の電話をコール |
201 | 仙台 | スタッフAグループの固定電話 |
202 | 仙台 | スタッフBグループの固定電話 |
203 | 仙台 | スタッフCグループの固定電話 |
204 | 仙台 | 赤間のスマホアプリ |
300 | 埼玉 | 全部の電話をコール |
301 | 埼玉 | スタッフAグループの固定電話 |
こんな感じです。
世界中のどこにいても活用できる内線
インターネット回線があれば、世界中のどこでも時間を問わず内線をつなげることができます。先日、ニューヨークに行った際にも、ホテルのWi−Fi環境を利用して、会社に内線をつないで会話を行いました。
そして、当然外線も使えるわけですから、会社の電話番号をもって外線発信ができます。
ニューヨークにいても、日本にいても、同じ環境・条件として電話がかけられます。
相手先には着信番号が、会社で使っている050からはじまる番号です。
SkypeやLINEでも外線発信を行うことができますが、発信者の番号は非通知だったり、アプリによる番号だったりします。内線的な連絡も可能ですが、あくまでアプリケーション同士のコネクトで、純粋な電話としての内線通話ではありません。
ナイセンクラウドによる内線通話は、海外どこにいても無料で行うことができます。
外線発信については、国内外問わず一律料金です。
電話料金と利用料金
気になるナイセンクラウドの利用料は以下です。
料金・機能比較表 | 1人用
ライト |
小規模
ペア |
中規模以上
プロ |
---|---|---|---|
選択基準 | お1人で運営されている会社様向け。 1台なので内線機能はご利用になれません。外出先で固定電話利用や、オプション機能(以下参照)を主に利用される方におすすめです。 |
1~2人で運営されている会社様向け。 内線機能利用可能。社外でも会社にかかってきた電話をスマホ・PCで取り次げます。 何かと外出が多い起業したての企業様におすすめのプランです。 |
中規模以上の会社様向け。 内線機能利用可能。機能をフルに活用したいお客様向けのプランです。5内線まで。5内線以上は1内線1,000円加算。 |
初期費用 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
月額費用 | 2,000円 | 5,000円 | 10,000円 |
内線端末台数 | 1内線 | 2内線 | 5内線~ |
内線通話・内線転送(取次) | × | 通話無料・転送無料 | 通話無料・転送無料 |
オプション料金 | 初期費用 | 月額費用 |
---|---|---|
対象・時間別ルール設定 | 無料 | 無料 |
留守番電話メール | 無料 | 無料 |
発着信ウェブ履歴 | 無料 | 無料 |
自動録音機能(119時間) | 2,000円 | 2,000円 |
IVR | 5,000円 | 5,000円 |
電話会議 | 5,000円 | 5,000円 |
モニタリング | 3,000円 | 3,000円 |
ウィスパリング
(モニタリングを含む)
|
5,000円 | 5,000円 |
PBXの設定や機能はweb上で管理する
発着信履歴や、外線着信をコントロールするには、オンラインの管理画面から行います。オリジナルの保留音を流すことも可能です。
外線着信プラン
外線着信を、内線番号ごとに細かくコントロールすることができます。
外線着信のトリガーとしては、曜日・日付・時間帯・相手側番号が指定できます。これにより、以下のような条件で電話を鳴らすことができます。呼び出しをさせず、即留守電に切り替えるといった動作も可能です・
- 営業時間外は、仙台だけ電話を鳴らす
- 19時以降は全部の内線を留守電にし、22時以降は明日以降にかけてもらうようなアナウンス
- 土日祝日は終日アナウンス
- お盆・正月の長期休業日はその日程をすべてアナウンス
発着信履歴管理
何時何分にどこからかかってきたか、内外線の発着信履歴などが管理できます。留守電が残された場合、メール通知とあわせて管理画面を確認します。
保留音や留守電アナウンスを設定可能
ナイセンクラウドでは、保留音を自由に設定することができます。うちの会社では、飛行機搭乗時に流れる、あの優雅なヴァイオリンを設定しています。音声データさえあれば(wavやmp3等)、アップロードして適用します。
留守電アナウンスは、自分で録音したものをアップロードしてもいいですし、素材サイトから利用するのも手です。
- ご用の方は、ピーッという発信音の後に10秒間でメッセージを入れてください
- お電話ありがとうございます。大変申し訳ございませんが、本日の営業は終了させていただきました。またのご連絡をお待ちしています
こういったメッセージはいろいろなサイトからダウンロード可能です。
メッセージ音源ダウンロードデジタルミュージックマシンビジネス向け製品・サービス | JVC
導入した内線電話を、無線化する
ナイセンクラウドはインターネット回線を利用したIP電話のため、回線側は特別な装置も必要なくすぐに導入可能です。しかしここからが問題。社内のLAN構築です。社内のLAN内で利用する構成としては、以下が考えられます。
- 固定電話タイプの電話機を使う
- スマートフォンアプリで使う
- パソコンで使う
ビジネス利用であれば、やはり1の固定電話タイプの機器が、使い勝手はよいと思います。しかしながら、固定タイプのIP電話は優先LANで接続するのが基本のため、配線が必要となります。配線を隠すには、オフィスを二重床にするなどのコストもかかります。元々二重床のオフィスであれば問題ありませんが、物件やレイアウトの都合により、どうしても線が出てしまうこともあるかと思います。
IP電話機は、電源の確保も必要ですので、ACアダプタを併用しますが、機器によりLANケーブルのみで、「PoE」という規格に対応したLANのハブ装置を使うと、電源のケーブルを1本減らすことができます。
オススメのIP電話機
オススメの電話機は、パナソニックのIP電話「KX-UT123N」です。いくつかラインナップがある中でもスタンダードなモデルです。基本的な機能は一通り備わっていますので、小さいオフィスであれば必要十分な電話機です。LAN接続の際、PoE対応のハブを経由すると、電源アダプタが不要です。
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さて、ここからが本題です。電話機本体を無線化した工夫をご紹介します。
有線→無線→無線 を構築する
固定電話機型のIP電話は、有線LANで接続すしますが、この部分を無線LANで接続します。使用したのは以下の機器です。dodocool 無線LAN中継機 ワイヤレス AP /リピータ/Wi-Fi ルーター。2.4GHzのモデルでも十分な性能です。
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無線LANの中継器です。設置している主ルーターの無線を拾ってさらに追加の無線LANアクセスポイントを作ります。この機器の場合、有線LANのポートがついてるため、有線接続しかできなかった機器を無線化することが可能です。一昔前の有線LANのみのテレビや映像機器類に対しても使えます。
固定電話タイプのIP電話機も、同じタイプの機器です。
ちなみに、WiFi-WiFiの接続はPLANEXのUSB給電型 無線LANルーター「ちびファイ2ac」でもつながることはつながるのですが、電波がいまいち安定しなかったため、この用途ではあまりオススメできません。ホテル利用とかにだったら問題ないんですけどね。
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電話機ごとにこのアクセスポイントを増やして接続すれば、LANケーブルをいっさい取り回さない状態で、固定電話を無線化することが可能です。
まとめ
わたしのナイセンクラウドの利用料は、基本料金10,000円 + 050番号 380円 + 通話料数千円と、基本料金が少し高いものの、本来数十万もかかったかもしれない初期投資がほとんどないのと、費用額面を超えるナイセンクラウドにしかできない利便性があるため、とても満足しています。